DeepSeekが切り開くオープンソースAIの新潮流

中国企業としては珍しく、DeepSeekがAI技術をオープンソース化することで国際AI競争に与える影響を解説。実際のメリットや課題、今後の展望をわかりやすくまとめました。
3/10/2025

DeepSeek AI Open Source

AIを革新するオープンソースへの挑戦：DeepSeekの存在感

中国のAI企業DeepSeekが、従来の「非公開モデル（プロプライエタリ）」中心のAI開発とは一線を画す動きを示しています。
特に注目なのは、同社がAI技術の一部を積極的にオープンソース化していること。多くの大手企業が閉鎖的な戦略をとる中、DeepSeekは「可能な限り透明性を高める」という姿勢で業界を驚かせています。
1月には低コストかつ少数のGPUでも欧米大手モデルと同等性能を示す「R1推論モデル」をリリースし、世界的に話題となりました。
さらに、最近は5つのコードリポジトリを公開し、「規模は小さいが、開発の透明性を重視した進歩」と自ら評しています。
これらのリポジトリは、既存のオープンソースフレームワークを基盤に、同社モデルが持つインフラ部分をサポートするものです。

DeepSeek創業者・梁文峰氏のコメント
「商業的成功よりも、他者が自分たちのイノベーションを取り入れて発展させることに大きな意義があります。
オープンソースは文化的行為と言えますね。」

詳細やインタビュー音声については、当社ポッドキャストでも取り上げています。

なぜオープンソースが注目されるのか

1. 協調的イノベーション

Mistral AIの共同創業者であるArthur Mensch氏は「オープンソースによって企業同士が成果を積み重ねやすくなり、ブレークスルーが加速する」と強調。
一方、非公開モデル（プロプライエタリ）はコードや学習データを外部に出さず、企業内で閉鎖的に保たれがちです。

2. アクセシビリティとコスト効率

Modulus社のリチャード・ガードナーCEOによれば、オープンソース化された基盤が広がると、企業の導入コストが下がり、多くの新興企業にもチャンスが生まれるとのこと。
事実、DeepSeekは少ないGPUリソースでOpenAIやGoogleに匹敵するモデルを開発し、市場を驚かせました。

3. 透明性と信頼

コードやモデル構造が公開されることで、コミュニティによる検証が可能に。
一方、MetaのLlamaはモデルの重みのみ公開し、トレーニングコードやデータセットは非公開のため「完全なオープン」とは言えない状況。
DeepSeekはより広範な要素を公開しており、透明性で一歩先んじる形です。

オープンソースに潜む課題

「オープンソース」の定義の曖昧さ
Open UKのAmanda Brock氏は、AIライセンス用の新しい枠組みが必要と指摘。DeepSeekもトレーニングデータのすべてを出しているわけではなく、「どこまで公開するか」の線引きが今後の焦点。
競争優位の確保
オープンソースとはいえ、企業としての差別化やビジネスモデルを確立しなければ存続が難しい。Mistral AIのように資金を集めつつもオープン路線を貫く例はあるが、DeepSeekも同様に収益化の道を模索するはず。
セキュリティと責任ある使用
コードが広く公開される一方、悪用リスクも存在。強力なAIモデルを誰でも使えるようになると、責任ある運用のガイドラインやモニタリングが不可欠になります。

今後の展望：非公開モデル（プロプライエタリ） vs オープンソース

大手クローズド戦略への対抗
OpenAIやAnthropicのような企業はクローズドなアプローチで先行してきました。しかし、DeepSeekの例が示すように、オープンソースで性能差を縮める動きは無視できないものになりつつあります。
競争軸の変化
モデルそのものがコモディティ化すれば、勝負は「実装ノウハウ」「データの質」「特化領域の専門知識」へと移行するかもしれません。
地政学的インパクト
中国企業がオープンソースで世界をリードするという構図は、国際的なAI競争のあり方にも影響を与える可能性があります。